Los Angels 3
3時間くらい寝た
ドミトリーのベッドは硬く、まるで病院のそれのようだった。アラームをかけていたが必要なかった。隣の客の活動音が丸聞こえだったからだ。これじゃエロ動画は見れないな。壁はきっとボール紙のように薄いのだろう
LAの夜は治安が悪いなんて話を思い出していた。クレイジージャーニーで丸山ゴンザレスが、
「ほら、ヘリが飛んでるでしょ。あれはロサンゼルス警察が週末何かあったらすぐ確認できるように空から警戒態勢を敷いてるんですよ」
と夜空を指差すと低空飛行するヘリが・・・なんて場面があったが、この日は金曜の夜。
同じように夜空を見上げると、少し遠くのほうでヘリが飛んでいた。さすが丸山ゴンザレス。
これからバスに乗ってシルバーレイクというところに向かうのだが、何しろ異国である。知らない街である。こんな簡単な作業においても、緊張せざるを得ない状況だったりする。その上夜である。ちゃんと辿りつけるのか?何かを間違うときっとライブは見れないだろう。ヤバい。
googlemapでバス停の位置を確認する。とりあえずサンセットブルーバードまで歩かないと。
時刻は夜9時過ぎ。ヘッドライトの川は日本とは逆に流れている。ハリウッドの夜は少しも終わりそうにない。カラフルな建物が広い間隔で立ち並んでいる。日本の郊外のような雰囲気だが、それともちょっと違う。
とそこへ黒人3人組が向こうから歩いてくる。若そうな彼らはこちらに気づくと明らかにヤバい空気を出しながらこちら近づいてくる。おいおい大丈夫か!?
ワタシは視線を逸らした。面倒はごめんだ。何もしないし何も持ってないよ。許しておくれよと言わんばかりに
だが案の定すれ違いざまこちらに向かって唾を吐いてきた。あぁ人種差別。かかりはしなかったが、彼らはそれを面白がるでもなく何事もなかったかのように向こうへ談笑しながら歩いていく。
観光客で何もするわけがないと分かっての事だろうか?
だが考えてみてほしい。日本の不良少年達は外国人観光客に唾などかけるだろうか?いやしない。
これは明らかに社会的生物として下に見られたから吐かれたのだ。分別のつかない不良グループがホームレスをみてバカにする、あの感じに近いのではと思う。
と、今になると考えられるが、その瞬間はただただ恐怖でしかなかった。ここは異国で、ワタシは脳みそがツルツルの中年ロンリー旅行者なのだ。
ここはすごすごとやり過ごしていくしかない。何かしようなどとは 微塵も思わなかった。ピストルで打たれたりしたら目も当てられない。ワタシはこの地でのライブを見たいのだ。
そんなこんなでなんとかバス停にたどり着く。sunset cherokeeで2番バスを待つ
バス停にはワタシ1人だけだった。基本バスを利用する人は貧困層の人と旅行者しかいないらしい。あとアメリカはuberが盛んなので、余計利用客は減っている。そんなだからバスは全然やって来ない。
早く来ないかなと左側を見つめ続けた。歩道を歩く人たちは、ハイソなカップルからクタクタの労働者まで様々だ
と、突然右側から無数のクラクションの音が聞こえて来た。そして急ブレーキの音も
見ると黒人のホームレスが裸足で踊りながら、サンセットブルーバードを向こう側から横断していた。クラクションの理由は完璧な信号無視で、その場所は横断歩道帯でもなく、見事な走路妨害であったためだ。
その黒人ラスタホームレスは次々に車を停めていく。サンセットブルーバードは片側3車線の幹線道路だ。 マトモな神経でないことは明白である。
運転席からは容赦ない罵声怒声の嵐。fuck!fuck!fuck!お前なんか死んじまえ!
やはり半端ないなアメリカはと、翌々月に控えたワールドカップフィーバーを知る由もなく、そう思って眺めていながらある事に気付く
こちらに近づいてくるのだ。
え!?何で!?テルミーホワイ!?あなたは何がしたいのですか!?それはワタシにとってもう死神にしか見えなかった。さっきの事もある。この街はクソジャップお断りなのか!?いやそんな事はないはずだ
そうこうしているうちに黒人ラスタフューチャリング死神は中央線を超え反対車線に入って来た。どんどん近づいてくる。彼の死神ダンスを止めるのはフォードかはたまた日本車か。だがもう誰にも止められない
こちらの車線でも罵声怒声の嵐。fuck!fuck!fuck!お前なんかただのゴミ
ホントマジで轢き殺してくれとは言わないまでも、このままワタシのところまで辿り着いたら一体何が始まるんだろうと、その恐怖にただ耐える事しかできない。何なんだ一体!?
だが彼の死の踊りは止まらない。きっとドラクエに出てくる不思議な踊りとはこの事なんだと思った。
そして
ラスタマンは無事サンセットブルーバードを渡りきる事に成功した。
ワタシは固まったそして思った
死んだ。
だがその黒人ホームレスは何事もなかったのようにワタシの横を通り過ぎ、何事もなかったかのようにコンビニの前まで普通に歩き始めた。
あぁなんと高度な悪戯。なんとリスキーな。
完璧に舐められたワタシはその後やって来たバスに逃げるようにのりこんだ。
命がけの暇つぶしである。もの凄い貧困とものすごい暇はこんな遊びを生むのか!?はたまた幻か?いやあれは現実だったよ。
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